ギャグ小説

e-ghosts 電脳幽霊

e-ghosts 電脳幽霊

03. 新天地!

「そやけど、何やね。 これだけ電子が生活に密接しているんやし、あたしらも出るならインターネットいう事かなぁ?」

「今時、柳の下とか、もうアカンのかな?」

藤本さんがボヤくと、竹下さんが相槌ではなく、追い打ちをかける。 とりあえず、インターネットは、

1、速いらしい。

2、電気がいるらしい。

3、国際的であるらしい。

くらいの知識は得た。 柳の下よりも、インターネットから出た方が、よっぽど目立つという事も分かった……らしい。

 

「あ、でも電源切られたらどうする?」

「切られても出るくらいの根性なくてどうすんの」

「あ、そか、そやね」

「何で納得してんのぉ〜…… !?」

何となく成立した漫才トリオから、徐々に離れるようにして遠巻きにしていた万里香たちだったが、ふいと思い立ったようにアユが家に帰ると言い出した。 つまり、インターネット上の墓にである。

「あたしも行く〜……!」

そっと離脱を計ろうとしていたアユに、ヒシリとくっついたのは奥田さんであった。

相方二人から「何でやねん」とつっこまれつつ、そのままアユにくっついていってしまった。

「……家族にちょっとも省みられてないもんやから、寂しいんやろな、奥田さん」

「うん、でも迷惑なんはアユちゃんやな」

万里香も黙って二人の飛んでいった方角を眺めていた。 心中は藤本さんらと変わらない。

(きっと、インターネット・カフェは大騒ぎだろうなあ……)

 

数日後……

 

「そう言えば、奥田さんどうしたやろね?」

竹下さんが遊びに来て、立ち話をしている時にタイミングよろしく、アユが友人たちと連れ立ってやってきた。 話に聞くと、インターネット・カフェは接続がにわかに悪くなり、無理矢理入り込んだ奥田さんは光ファイバーを暴走して、何とか家族の前に出てやろうとしたらしい。

「で、どうなったん?」

「何かねぇ、セキュリティー・システムに引っかかったんだってぇ」

予想外の展開だったが、何だか妙に納得してしまう。

 

「怨念がマズかったんやろか……」

「運動不足で重たなっとったんちゃうん?」

そして、心配する人は、誰一人としていなかった。 まあ、分解されても死ぬ事はないと考えているからかもしれないが、とにかく荒れ放題の奥田さんの墓は、寂しい沈黙に包まれていた。

またを平和ともいうが、誰もそこまでは言わなかった。

 

とにかく、奥田さんは今、一般的に言うコンピューターウィルスとなって、ネットのどこかにいるはずだ。 今使っているパソコンの調子がおかしくなったら、それはきっと……いいや、ここから先は言わないでおく事にしよう。

2002年の文芸部の部誌に投稿した作品です。 インターネットでお墓参りができるというニュースをきっかけに、この作品が生まれました。 当時、早速ネット検索をして、たまたまヒットした一般公開されている完全フルCGのお墓をお参りしてみました。 バーチャルでお掃除し、お線香を上げ、お供え物をし、BGMには般若心経が流れました。 驚きつつ、関心しつつ、何だかなと思った記憶があります。 そして、この作品を仕上げようとして、先代PCが謎のオシャカを遂げました。お、奥田さーん……!

2002.07 投稿(2009.08 一部加筆修正)

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