01. 走る走るわし達
カンカラカラガシャン♪
「グランパ! またバラバラになって!」
グランパ・ジョージは喜びのダンスを踊りまくっていた。
それもそのはず、攫われた頭が返ってきたのだから! しかし、その結果がこのバラバラに散らばる彼の数々……
「当分ダンス禁止!」
「ふん! お前達にわしの気持ちなんぞ、分かるものか!」
ぷいっ!
「あーあ、スネちゃったよ……」
ここはゴーストタウン。
云わずと知れた踊る骨、グランパ・ジョージ宅だ。
「ねえグランパ、ちょっとは僕たちの苦労も考えてよ」
そう嘆くのは孫のジャック。 いつの間にかグランパ・ジョージの世話を押し付けられてしまった少骨だ。
「グランパ組み立てるの、大変なんだから……」
「なんじゃとジャック! 大体お前はこないだもわしが助けてやったのに、あんな怪しい“ひぃろぉ”とやらに礼なんぞ言いおって!」」」」
あれ?
ジャックはふと気づいた。 グランパ・ジョージの声が複数、重なって聞こえる。 そして彼が握っていたグランパ・ジョージの骨が、コキョコキョ動き始めている。
「うわああ! 骨がグランパ……グランパーー !? 」
なんと! バラバラになったグランパ・ジョージの骨が、ひとつひとつ、小さなグランパ・ジョージに変わっていた!
ミニチュア・グランパ・ジョージ大量に誕生!
「おお!」
「こりゃすごいわい!」
「毎日欠かさずに食べていた『超とろーぴかるガム(キシリトール配合)』のおかげじゃな!」
どんなガムだ! という疑問を無視し、ミニ・グランパ・ジョージ達はしゃべるしゃべる……
「ど…どうなってんの……」
ジャックは倒れそうになった。
「しっかりせい! このガムでも食べて!」
「いやだあー!」
あまりにもの騒々しさに、ほかの孫たちもやってきた。
そして一言。
「……グラーンパーー !? 」
「うわああ……どうしよう ?? 」
「どうしようって……」
理解を超えた出来事は、人の冷静さを失わせます。
「こうなったらもう、あの人を連れてくるしかないね」
唯一、自分を見失わない末の孫、スージー。
「あ……あの人って?」
パニック中の兄弟たち。
「グランマよ」
スージーはさらりと言う。
「グラン……マ……」
グランパ・ジョージはぴしりと凍る。
「ひいい!」
「そ……その人だけは連れてきちゃいかん!」
「どうする? わし」
「わ……わしに聞かれても……」
「あ! そうじゃ!」
逃げるんじゃ!
ミニ・グランパ・ジョージ達はわらわらと逃走し始めた。
「うわー! グランパが逃げたー!」
「大変だぞ! あのグランパが世に解き放たれたら……」
「こ……この世の終わりが……」
「……近いな」
孫の気も知らず、ミニ・グランパ・ジョージ達は逃げる逃げる……
「おお! 骨身が軽いわい!」
「さすが『超とろーぴかるガム(キシリトール配合)』を食べていただけはある!」
なんて感動しながら。 前に広がる世界も恐れず、ミニ・グランパ・ジョージは行く!
「……あ、だめだよ、そっちは玄関っ!」
とにかくダルメシアンもびっくりな『101匹爺ちゃん』的行動をとりまくるジョージたちを捕獲するべく、孫達は手に手にスーパーの袋やら、掃除機やら、果ては粘着シートなんかを必殺の道具にして走り回る。
「あ、ピーターそっちの隅っこ!」
「てめーこそ、何逃げられてんだジャック!」
「二人とも、ミニ・グランパ踏んづけてる!」
長孫・三孫・四孫は、とにかく大わらわでそこら中を駆けずり回っている。 大きくても迷惑この上ないグランパは、小さくなって大量発生すると、更にタチの悪い迷惑振りを発揮する事が証明された。