ギャグ小説

楽しげなスケルトン一家3・ランナー

楽しげなスケルトン一家3・ランナー

01. 走る走るわし達

カンカラカラガシャン♪

「グランパ! またバラバラになって!」

 

グランパ・ジョージは喜びのダンスを踊りまくっていた。

それもそのはず、攫われた頭が返ってきたのだから! しかし、その結果がこのバラバラに散らばる彼の数々……

「当分ダンス禁止!」

「ふん! お前達にわしの気持ちなんぞ、分かるものか!」

ぷいっ!

「あーあ、スネちゃったよ……」

 

ここはゴーストタウン。

云わずと知れた踊る骨、グランパ・ジョージ宅だ。

「ねえグランパ、ちょっとは僕たちの苦労も考えてよ」

そう嘆くのは孫のジャック。 いつの間にかグランパ・ジョージの世話を押し付けられてしまった少骨だ。

「グランパ組み立てるの、大変なんだから……」

「なんじゃとジャック! 大体お前はこないだもわしが助けてやったのに、あんな怪しい“ひぃろぉ”とやらに礼なんぞ言いおって!」」」」

 

あれ?

 

ジャックはふと気づいた。 グランパ・ジョージの声が複数、重なって聞こえる。 そして彼が握っていたグランパ・ジョージの骨が、コキョコキョ動き始めている。

「うわああ! 骨がグランパ……グランパーー !? 」

なんと! バラバラになったグランパ・ジョージの骨が、ひとつひとつ、小さなグランパ・ジョージに変わっていた!

ミニチュア・グランパ・ジョージ大量に誕生!

「おお!」

「こりゃすごいわい!」

「毎日欠かさずに食べていた『超とろーぴかるガム(キシリトール配合)』のおかげじゃな!」

どんなガムだ! という疑問を無視し、ミニ・グランパ・ジョージ達はしゃべるしゃべる……

「ど…どうなってんの……」

ジャックは倒れそうになった。

「しっかりせい! このガムでも食べて!」

「いやだあー!」

あまりにもの騒々しさに、ほかの孫たちもやってきた。

そして一言。

「……グラーンパーー !? 」

「うわああ……どうしよう ?? 」

「どうしようって……」

 

理解を超えた出来事は、人の冷静さを失わせます。

 

「こうなったらもう、あの人を連れてくるしかないね」

唯一、自分を見失わない末の孫、スージー。

「あ……あの人って?」

パニック中の兄弟たち。

「グランマよ」

スージーはさらりと言う。

「グラン……マ……」

グランパ・ジョージはぴしりと凍る。

「ひいい!」

「そ……その人だけは連れてきちゃいかん!」

「どうする? わし」

「わ……わしに聞かれても……」

「あ! そうじゃ!」

逃げるんじゃ!

ミニ・グランパ・ジョージ達はわらわらと逃走し始めた。

「うわー! グランパが逃げたー!」

「大変だぞ! あのグランパが世に解き放たれたら……」

「こ……この世の終わりが……」

「……近いな」

孫の気も知らず、ミニ・グランパ・ジョージ達は逃げる逃げる……

「おお! 骨身が軽いわい!」

「さすが『超とろーぴかるガム(キシリトール配合)』を食べていただけはある!」

なんて感動しながら。 前に広がる世界も恐れず、ミニ・グランパ・ジョージは行く!

「……あ、だめだよ、そっちは玄関っ!」

とにかくダルメシアンもびっくりな『101匹爺ちゃん』的行動をとりまくるジョージたちを捕獲するべく、孫達は手に手にスーパーの袋やら、掃除機やら、果ては粘着シートなんかを必殺の道具にして走り回る。

「あ、ピーターそっちの隅っこ!」

「てめーこそ、何逃げられてんだジャック!」

「二人とも、ミニ・グランパ踏んづけてる!」

長孫・三孫・四孫は、とにかく大わらわでそこら中を駆けずり回っている。 大きくても迷惑この上ないグランパは、小さくなって大量発生すると、更にタチの悪い迷惑振りを発揮する事が証明された。

2004.07 投稿(2009.08 一部加筆修正)

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