02. 黄金の101匹爺ちゃん
大方グランパを集め終った時、長孫ピーターは唐突に二階へ猛ダッシュしていった。 何事かと思った三孫ジャックと四孫スージーも後から様子を見に上がると、ピーターの煮詰まったような怒鳴り声が響いてきた。
「こら、ボニー! お前、何我関せずでサボってんだ!」
それは次孫にして長女のボニーの部屋からだった。
嫌ぁ〜な予感がしつつも、三孫と四孫はそろりと部屋の扉から半顔を出して覗き見る。 長男は怖い物知らずだ……何故なら長女は現在、反抗期ど真ん中のストライクゾーンにいるのだ。
「うるさいなぁ、アタシが何してようと、アンタには関係ないでしょう。 さっさと出て行ってよ」
「関係大有りだろーがっ! てめーのグランパだぞ!」
長孫・次孫の剣幕に、残りのミニ・グランパ達までが戸口や柱の影に隠れるようにして、こそっと様子を窺っている。 どれもこれも一様にオロオロしたり、蒼ざめていたり、小さい骨をカクカク言わせて成り行きを見守っている風だった。
「お前も孫の一員なんだから、手伝えよ! あんだけ大量発生しやがったんだぞ、お前の爺ちゃんは! しっかり集めておかないと夜もおちおち寝てられないだろ!」
そう言ってピーターは柱の陰に潜むミニ・グランパ達を指差した。 グランパ達は一斉にぎくりっと強張り、「誰もいませんよ〜」オーラを発しながら不気味な静寂を生んでいる。
そんなミニ・グランパを見ながら、ボニーは暫く考えた後、おもむろに足を動かした。
「こらーっ、グランパを蹴るなーぁっ!」
一瞬呆気にとられたピーターの怒鳴り声が響く中、目の前をミニ・グランパが弧を描いて飛んでいく。 とっさに三孫が手にしていたスーパーの袋を全開にして蹴られてきたグランパを収容した。 ついでにスージーの方も扉の陰やらにいたグランパ達を抜かりなく回収し終えていた。
気が付くとグランパ達は青いゴミ袋三袋分くらいになっていた。 時々暴れすぎたグランパの成功例が、袋を突き破って第二の逃走を始めたけれども……。
逃走者はサクサク空気を切り走る。
切られた空気はしゅごしゅご吸われる。
「待てグランパ!」
長孫が掃除機を振り回し、追いかける。
「なんか楽しそうだよね、ピーター」
妹が微笑まし気に兄を見ている。
ヤケ気味になっている彼等の気持ちがよく理解ってしまうジャックであった。
しゅごぉぉ―……すぽん!
「やぁーっと捕まえたぜ……!」
自由を夢見、逃走を図ったミニ・グランパの回収が完了した。
吸われたミニ・グランパを取り出そうと、掃除機の蓋を開く。
光が、隙間から走った。
部屋は満ち、そこから輝きを放つ、現れた光の集合体。
ゴールデン☆ジョージ!
気分はラスベガス☆的なポーズで我等が爺ちゃん登場!
……ぐは!っっっ
これ以上ややっこしいコト、せんでくれぇぇ〜
孫達の願いはむなしく、当の本人の喜び様はグランパ・ジョージにだけしか分からない。
「おおお! これはすごい! さらにすごい! 金ピカじゃあ!」
全骨黄金に染まったミニのグランパ・ジョージは叫ぶ。
「おおお! これはすごい! うらやましい!」
ゴミ袋から覗いていた残りのミニ・グランパ達は叫び、我も我もと次々、掃除機の中に突入した。
「そ……掃除機がぁ……」
ミシミシはち切れそうだ。
「でも、また逃げ出してうろちょろされるよりマシだよ」
賢明な四孫の意見に賛成。
「……で、どうしようか、あれ」
悩みの種は、黄金の感動に踊りまくっていた。
ゴールデン☆ジョージのぉぉ〜
ゴールデン★ダンスぅぅ〜♪
「グランパ! 歌って踊ってる場合じゃないでしょ!」
「ジャック、ジャック! ほれ見ぃ金ピカじゃ!」
嬉しそうにペカーと笑うグランパ・ジョージ。
「しかも! 手品までできるぞい!」
パコッとはずした上腕骨から、わさわさ出てくるコガネムシ。
はいっ 拍手っ