04. ジョージ行きます
「な、何だ、何があったんだ !? 」
慌てて二階から転げ落ちてきたピーターやスージー、大音量でハードロックを聴いていたボニーまでもが降りてくる。 お母さんに至っては包丁を片手にしたまま台所から飛び出してきた。
彼らがリビングで見たのは、テレビに噛り付く勢いでガタガタ震えているジャックの姿だった。
「どうしたんだ、一体?」
「あ、あわ、あわわわあ、グ、グラ、グラぁ〜〜ぁ!」
「……待て、何言いたいのか全く分からないぞ」
ジャックは、あわあわ言いながら画面を指差している。 怪訝に思いながらも指の先に視線を移したピーターは、少しの沈黙の後、やはり大絶叫を上げた。
「……っグ、グぅ〜〜 !? 」
そのままリビングを駆け去り、慌てた様子でバタバタと二階へ駆け上がる。 その様子に残りの一同は巨大な疑問符をそこら中に散らしていたが、指の先のロケットの側面の小さな物体に釘付けになってしまった。 そいつは小さいのにキラキラと輝いていた。
「グ、グ、グランパじゃないの、それっ !? 」
そう、ロケットの壁面にぴったりと張り付いていたのは、紛れも無く純金製ミニ・グランパ・ジョージの姿だったのだ。 カメラにしっかり捕らえられていたのだ!
「な、何で、どうやって ?? 」
「知らないよ、でも、でもコレ……どっから見たって」
「きゃーっ、お、お義父さん〜〜! 何でロケット……」
「わーっ、お母さんしっかり !! 」
お母さんが包丁を片手にしたままスーッと失神してしまった。 ボニーもジャックも目をシロクロさせるばかりだが、どうしてか末娘のスージーだけは、いつ如何なる時も冷静だ。
「第二の逃走後、捕獲し損ねたゴールデン・グランパが屋外に脱走していたのね」
画面の向こうで、脱走グランパはまるで機体の一部そのものでへばりついている。
「でも、一体どうやってくっついてるのかな……?」
驚きを通り越して感心してしまう冷静さで、スージーは別の観点から状況を疑問視している。
「そりゃーアレじゃ、『超とろーぴかるガム(キシリトール配合)』を両手両足に貼り付けてるんじゃ!」
「そーじゃそーじゃ、あれはか〜な〜り強力だからなっ!」
振り返るとわらわらとゴールデン・ミニ・グランパ・ジョージが溢れかえっていた。
「え、あのガムってそんなに凄かったの?」
「ってゆーか、そもそも食べ物粗末にしちゃいけないでしょ」
馬鹿正直すぎて何でも信用してしまうジャックの隣で、やはりスージーが至極冷静に指摘する。 そんな弟妹たちの後ろから再び現れた長男ピーターは、蒼白の顔をして呆然と口を開いた。
「……グ、グランパが二、三匹足りねぇ」
「じゃ、やっぱりテレビのあれは、うちのグランパって事ね」
「スージー……間違ってないけど、その言い方はやっぱり間違ってると思うよ」
「どっちにしても、まだ世間にあーゆーグランパが野放しになっているわけ? 冗談キツイよ、それ」
そうこうしている間に、テレビの中でロケットは宇宙に向かって上空遥か数千メートルにまで達していた。
「ねぇ、例え純金でも骨でも、大気圏に突入したら燃えてなくなるよね? あのサイズ」
またしてもスージーが何だか怖い事を言う。 ジャックと母親は同時にスーッと青くなるが、わらわらといるグランパたちは、半当事者であるにも関わらず、実にケロリンとしている。
「ノープロブレムじゃっ! なあ、わし!」
「おお、ノープロブレムじゃっ! なぜなら……」
「ちょ、ちょっと画面の向こうでグランパが光ってるよ」
ボニーの呟きに、一同がこぞってテレビを覗き込む。
するとどうだろう! 確かに小さなゴールデン☆グランパの周囲で何やらユラユラとしたものが発光している。
「何、あれ……」
「所謂、オーラやらバリアーやら、何だかそんな風に世間一般に言われているアレじゃっ!」
「いや、アレって言われても……」
「そんな事お義父さん出来なかったでしょ !? 」
「修行を積めば出来るんじゃ! 凄いじゃろ!」
言い合っている間にも、液晶画面の向こうでは、グランパがますます煌々と光り輝いてロケットの側面にへばりついている。
「出るぞ、必殺技じゃ!」
わくわくしてミニ・グランパたちは画面の前に群がっている。 どっかのデパートの屋上あたりでやっているヒーローショーを見ている子供たちと何ら変わらない。
ゴールデン☆グランパ・スケルトン・フラーッシュ☆☆☆ぴかぽー