ギャグ小説

楽しげなスケルトン一家3・ランナー

楽しげなスケルトン一家3・ランナー

05. この世は爺ぃの為にある

画面の向こうでジョージが一層光り輝いている。

「それってさ、命削ってる事にならない?」

どこまでもスージーは残酷なまでに冷静だ。 グランパたちはこぞって沈黙し凍りついた。

「……か、帰って来い、わしっ!」

「は、早まるな、わしっ!」

小さなジョージたちは画面にへばりついて叫びだした。

無駄なのに……。

と、その時ミニ・グランパ達の黄金の頭が、一斉に光り始めた。

きぃん……きぃん……きぃぃんん……

「や……止めるんじゃ! わし! 命が……」

頭を押さえ、各自ひとりでしゃべっているおじいちゃん達。

「……どうしたんだろう? グランパ達」

「テレパシーとかそんなモンじゃないの?」

オーラ発光もアリなら、もうなんでもアリだよと息をつく末孫。

「あ! それじゃスージー! よし、わしがこのテレパシーをお前達にも伝えててやろう」

ジョージのひとりが口をカパッと開け、カクカクと伝達する。

«ふっふっふ……案ずるな、わし達よ! これは“ゴールデン☆グランパ・スケルトン・フラーッシュ☆☆☆”じゃぞ!»

「だから危ないんじゃ! それは!」

「命を削ってまでせんでいい!」

«ふぁっはっは! その点に関してはボニーが助けてくれる!»

「え……ええ? ア……アタシぃ?」

突然指名され、ボニ―は戸惑う。

«ほれアレじゃ、アルミホイルの何とか電流! “ゴールデン☆グランパ・スケルトン・フラーッシュ☆☆☆”は、あの電流を骨中に蓄え、出せる技なのじゃ! きっとボニーはそれに気づき、アルミホイルを出してくれたんじゃ!»

「おお! そうだったのか、ボニ―!」

「えらいぞ! 流石はわしの孫じゃなっ!」

「……ええっと……よかったね、グランパ……命削らずにすんで」

本当にそれで良かったのかどうか、彼女の複雑な表情からは、真実がありありと語られてくる。

「でもグランパ……」

«ぬおっ! 話し掛けちゃいかん! 今集中せねばこの“ゴールデン☆グランパ・スケルトン・フラーッシュ☆☆☆”が破れてしまう! ちょっとした気の緩みは禁物じゃ! しかあし! 大気圏よ、この技に挑むなど、みくびったな! 何故ならこのわしは今、 “スーパー★ゴールデン☆グランパ・ジョージ・スケルトン”じゃからなっ!»

 

最強! 最高! 最上級!

スーパーじいちゃん、今宇宙へ!

 

「……グランパ?」

«なんじゃ?»

「……無事?」

«あったりまえじゃあ! 何せ、わしは“スーパー★ゴールデン☆グランパ・ジョージ・スケルトン”じゃもんね!»

「……今、宇宙?」

«おお! そう宇宙じゃ! 綺麗じゃぞい! ここは!»

「……大気圏……突き抜けたんだ……」

«ふん! 大気圏か! この必殺技をお見舞いしてやったわい! ヤツめ、悲鳴を上げて粉々に散りおったわっ!»

ひゃあ、かっこええ!

と地球のミニ・グランパ達は、もうヒーロー万歳! とテンションは最高潮で大喜び!

それに反比例して、家族達の気分は盛り下がっていった。

ひゃあひゃあ嬉しそうに騒いでいるミニ・グランパ達を、見れば見る程、ああ、いけない魂よ戻っておいで、と、平常心の保持に必死だったのだ。

 

いや、待ってグランパ。 あれだけしゃべくりながら、気の集中ができたの?

スーパー★ゴールデン☆グランパ・ジョージ・スケルトンって何だよ?

それに大気圏は別に、グランパに戦いを挑んだ訳ではないと思うよ……てか

「たっ……大気圏、破壊しちゃだめだろ!」

 

«ふふんっ 分かっとらんなぁジャックは。わしは今、最強で最高で最上級なんじゃ! 何をしても許されるんじゃあ〜〜!»

「ぎゃあぁ! グランパなんかヘンだよ、帰ってきてー!」

暗黒の破壊神が、宇宙に踊るイメージが過った!

「……家族の平和を壊しても飽き足らず、宇宙の平和までもを破壊し尽くす気よ、あのグランパ……」

ぼそっと呟くボニ―……

「……この世の終わりが来たか……」

ひそっと嘆くピーター……

何か言う暇も無く、ふらりと倒れるお母さん……

「グランパ、気象衛星のロケットは大丈夫なの?」

冷静スージー。

次兄はこの時、何でこんな状況でそんなに頭が働くんだ! と涙を流したとか。

«もっちろん! でもこれ取れないんじゃ、『超とろーぴかるガム(キシリトール配合)』が強力過ぎて……仕方あるまい、ここはひとつ“ゴールデン☆グランパ・スケルトン・フラーッシュ☆☆☆” をMAXで喰らわせてやるか!»

2004.07 投稿(2009.08 一部加筆修正)

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