06. 爺ぃよ何処へ行った
「うわあぁ! ロケット壊す気満々だー!」
「さっきの“ゴールデン☆グランパ・スケルトン・フラーッシュ☆☆☆”でよく壊れなかったよね、ロケット」
妹の神経と祖父の無神経さにとめどなく溢れる涙が、ジャックを飲み込む。
がぼがぼがぼ
しかし! いくら嘆いても悔やんでも、もう遅い!
グランパの超大技は、全宇宙に響く!
ぺかぴかあー!
…………。
『えー、臨時ニュースをお伝えします! 先程打ち上げが成功した気象衛星“乗自1号”が、な、な、なんと! う……宇宙でき、きき、消えてしまった模様です!』
「じょうじ1号?」
「ああ、ロケットか」
「ふぅん、消えたんだって」
……。
「っぐ……グランパあーー !? 」
「っわしぃぃぃぃぃぃぃぃ !? 」
破壊神は消えた。
「……わ……わしからの通信が……途絶えた……」
「そ……そんな……グランパが……」
「わしが……」
「死んじゃったあーー!」
ばこっ
「痛あっ!」
「なに泣いてんだ、お前は! そこにグランパいるだろうが!」
ミニ・グランパ達と一緒になって泣いていたジャックは、今自分が誰と何をしているのかを思い出した。
「グランパ……良かった生きてたんだね !? 」
「まだうじゃうじゃとな……ほら! グランパ達も泣くなよ!」
オメデタイ弟を放っておき、ぐすぐす泣くグランパ達を宥める兄。
「ピーター?」
「何だよジャック、ぼけっとしてないで、お前もグランパ達をなんとかしろよ!」
「いや……なんか今のピーター、冷静だね……」
「あたしの冷静さを少し分けてあげたの」
さらりとそういうことを言うスージーに、ジャックは『常識』の壁を越えたことを確信した。
こうなった原因はもちろん、グランパ・ジョージにある。
「……ああ! う……宇宙に行っちゃったグランパは……」
「……死んだんじゃろう……通信が途絶えたのがその証拠……」
ミニ・グランパ達は自分の死を悼み泣いた。
「……それが、大丈夫みたいよ、あのグランパは……」
振り返ると、ボニーがくいっと顎を杓った。
先にはつけっぱなしのテレビのニュース。
『……ロケットは大丈夫なんですよ!』
「……誰? この人」
「さっき来たゲスト。 ナントカ理論に詳しいセンセイらしいけど」
ボニーはテレビの音声を大きくした。
『というよりスゴイことですよ! 宇宙でですね、ロケットからですね、何らかの強い電磁波による発光がこう生じたんですね! するとですね、光によってですね、時空間にズレが出来たんですね! するとどうなるかと言いますとね、なんとですね! タイム・トリップしてしまうんですね!』
ものすごくエセっぽいそのセンセイは熱弁する。
「……これ、ホントにニュース番組?」
「年末の特番に出てきそうだよなあ」
アナウンサーも困っていた。
分かるようでわかんない……そんな顔で聞き流していた。
「でもさ」
スージーが口を挟む。
「もし仮に、この人の説を取るとしたら、宇宙に行っちゃったグランパは、ロケットと一緒にどこかの時間にタイム・トリップしたってことだよね。 有り得るよ、あのグランパだし」
「そうじゃなあ! 充分有り得る! 何せやつは“スーパー★ゴールデン☆グランパ・ジョージ・スケルトン”じゃからな!」
何時の間にか、元気を取り戻したミニ・グランパ達がきゃいきゃい騒ぎ踊っていた。
とてもうらやましい……という気持ちをブンブン撒き散らして。