07. ふぃーる・ざ・ぱわー・おぶ…
さてその頃、話題の人、ロケットにくっついて宇宙に消えたグランパ・ジョージはどうしていたのか……彼は太古のシダ植物を掻き分けていた。
「ここは何処なんじゃ?」
超大技を出した時の電流が抜けきらないのか、時折ぱちっぱちっと火花を散らしながら。
「――こっちじゃ!」
「おおう!」
何者かが近づいてくる。
ガサッ!
「! おお……お前達は……」
「わし!」
未知との遭遇!
いやいや、第二の逃走の成功者、つまり逃げ出してきちゃったミニ・グランパ二体がそこにいたのだ。
「どうしてこんな所にいるんじゃ、わし?」
「わしこそ……いやあ、わしらは話せば長くなるんじゃがな」
黄金の小さなグランパ三体が嬉々として駆け寄ったその時。
「じゅら……」
「じゅら?」
じゅらりと現れた大きな影……
大きな口、鋭い爪、狂暴そうな牙を持つどでかい爬虫類……
「恐竜じゃあ!」
三ジョージは眼を輝かせた!
恐竜じゃ! わくわくわくわく……幼い少年の日が蘇る……
それは飲み込まれる一歩手前までの間のこと……
「じゅらああ!」
「ぎぃやぁあああああ !! 」
ミニ・グランパ達は回れ右!
「なんじゃ! やっぱり恐竜とは怖いモンなのか!」
「わし! わしら、黄金じゃから、別に逃げんくてもいいんじゃないのか?」
「でも元は骨なんじゃから、食われてしまうじゃろっ!」
♪♪♪
「? なんじゃ、この音楽は!」
「あ! 聴いたことあるぞい! 確か『ジュラシックパーク』のテーマ曲じゃ!」
「な……なにぃ……じゃあここは……大阪にある某テーマパークかッ!」
あながち間違いとも言えない状況の中で、ミニ・グランパ達はひたすら逃げるのであった。
走って走って走って走って……
転がって転がって転がって転がって……
そこら中に響き渡る恐竜たちの咆哮を聞きながら、三ジョージは、ひたすら水上を走り回った。金のくせして沈みもしないのは、それだけの猛スピードを出していたからだ。
「な、何かどんどん深みにはまってる気がするが……大丈夫なのか、わし達 !? 」
「なるようになるんじゃ! とにかくあの上まで走るんじゃ!」
急勾配を登りきったジョージたちを待っていたのは、思わせぶりな暗闇と不安定な足場だった。
「な、何で真っ暗なんじゃ! さっきまでのピカピカした明かりは何処いったんじゃ !? 」
不安がる黄金ジョージたちの頭上に、いきなり猛哮が降りかかる。とっさに視線を上げた先には、さっき撒いたと思っていたTレックスがっっっ……!!
電撃と共に身を乗り出してくる迫力に呑まれて、三ジョージは顎を外さんばかりに飛び上がって大絶叫を上げたのだった。
とっさに逃亡に出たものの、三ジョージの下で突如として足場が消えた。
「っっっ !? 」
「……った、滝 !? 」
ずどどどどどどっっっ
ぱしゃっ☆
「ぎ……ぎぃぃぃやぁぁぁぁぁーー!! 」
とぽんっ
とぽんっ
とぽんっ
この時撮られた写真に、三匹のゴールデン・ミニ・ガイコツがこの世の終わりのような表情をして写っていた。 暫くは、摩訶不思議なプチ怪奇事件として、話題を攫ったそうだ。 ピーク時で三時間待ちの人気アトラクションの待ち時間に、更に拍車が掛かったのは言うまでも無い。
そのままどんどん沈んでいき、三ジョージは排水溝と思しき穴に吸い込まれていった。 ぐるぐる回りながら、ぶつかりながら、がんごろ音を立てながら流されて流されて……ようやくどっかの出口に辿り着いたのだった。