猫が鳴いた。
別に大した事じゃないと言われたが、続きも聞かずに大した事じゃないと言わないでほしい。
猫が鳴いた。 そして、逆立ちした。
まだ続きがある。 逆立ちして、そのまま逆立ち歩きを始めた。
どうた、凄い話だろう。 しかも、逆立ちして、また鳴いて、そして猫は消えた。 何処へ行ったかは分からない、でも猫は確かにそこにいた。
暫くして、また別の猫を見た。
その猫も鳴いた。 鳴いて、逆立ちして、逆立ち歩きをして、そして消えた。 二度も同じような光景を見て、さすがに怪しいな、と思った。
また暫くして、別の別の猫を見た。
その猫も鳴いて、逆立ちをして、逆立ち歩きをして、消えた。
そして次の日、ついに自分の番が来た。
鳴いてみた。
すると、猛烈に逆立ちがしたくなった。 思い切って足を蹴り上げてみると、思いの外、簡単に出来た。 でも、バランスが悪くて前へ前へと足が出てしまう。 止まらなくて、歩いていくと、ストンッと落ちた。
落ちて落ちて落ちて落ちて、気が付くと見た事もない世界にいた。
ここは一体どこだろう。
考えなくても何となく分かる。 周りを見ると、以前見た猫がいた。 じーっとこちらを見ていた。 その場から移動して、何もない一点を見ていると、また一匹、見た事もない猫が来た。
いつの間にか、都会から猫がいなくなった。