からすのあしあと見ぃつけた。
川の近くの細長い公園の角にある、小さなコンクリートの上に見ぃつけた。
ぺとぺと、全部で24歩。 今はすっかり乾ききって、小さなあしあとが残っているだけ。 だけど、このコンクリートがまだ生乾きだった時、ここを歩いたからすは一体、何を思った事だろう。
あ、何だか人間どもが面白そうな事をしてるぞ、あれは何だ、何だ? 川の向こう側の電柱の上から舞い降りて、からすはコンクリートの一歩手前で着地をした。
最初は恐る恐る……ぺと。
わ、面白い! 何だこれ!
ぺとぺとぺと、ぺとぺとぺとぺと、ぺとぺとぺと……気が付くともう向こう側まで歩いてしまっていた。 振り返って、小さなあしあとを見て、からすは満足げに尾っぽを揺すり、そのままひらっと飛んでいった。
或いは……ぺと。
うぎゃ、何だこれ! めり込んだ、めり込んだ!
大慌てしたからすは、無我夢中で向こう側まで走っていた。 どきどきしながら振り返り、自分のつけたあしあとを見て、「僕は悪くなーい」と叫んで大急ぎで飛んで行ったのかもしれない。
もっと利口なからすだったら、あしあとをつけたその足が乾く前に、川で足を洗ったかもしれない。
からすのあしあと。
公園を通るたびに見かけては、思わずにっこりして通り過ぎる。 ふと空を見上げると、必ずからすが飛んでいく。
ある時は電柱の上で一休み。
ある時は民家の屋根で一休み。
ある時は大きな木の枝で一休み。
どのからすが、あのあしあとをつけたのだろう?
あしあとを見つけたその日から、からすはちょっと特別な存在。